私は、1979年に工学部機械工学科を卒業。地元の大阪府八尾市に拠点を構えコネクタ等の部品の製造を手掛けるホシデン株式会社に入社しました。電子機構部品の設計に携わり、供給先からの納期、品質面での厳しい要求に対応する中で、機構設計技術を身体に叩き込まれました。入社した時から「10年ごとに仕事を変えて、キャリアを重ね視野を広げよう」と決めていたので、新天地を求めて1988年にパナソニック株式会社に転職。制御技術開発研究所で先端技術のレーザを応用したミクロンレベルの距離測定が可能なレーザ応用センサの開発に携わりました。開発は見事成功し数多くの商品を創出してFA分野へ事業展開しました。無我夢中で仕事を行っていたので、気づけば中途入社して16年が過ぎていました。6年遅れながらも「10年ごとに変化する」という方針を貫こうと起業を決意し早期退社。紆余曲折を経て、得意の機構設計技術と開発・事業化から製品開発まで携わったキャリアを活かして、電子機器設計会社「株式会社アシステック」を創業。現在15年目を迎えています。
 アシステックは、機構設計、回路設計、ソフトウエア設計の技術総合力で電子機器、機械の開発設計・生産を行い、顧客企業の商品創出をワンストップでサポートしています。独自のビジネスモデル「アシステックアライアンス」により、350社の提携先企業を束ねてあらゆる商品開発を行うことができる体制を構築。近年は生産機械まで幅広く受注するようになりました。ホームページに概要を掲載していますので、興味のある方はどうぞ御覧ください。(http://www.assistec.jp)
 「120歳まで、がんがん働きまっせ!」と言い続けてよく笑われたのですが、超高齢化社会を迎え、60歳を超えても働き続ける時代が到来しました。今回、寄稿の機会を頂いたので、人生100年時代における技術者への「起業のススメ」をお伝えしたいと思います。人生100年と最近言われるようになりましたが、実情は60歳で現役を卒業させられ、延長雇用で65歳までほそぼそと現役をサポートするといったケースが多いのではないかと思います。豊富な経験を持つ多くの優秀な技術者が行き場を失っていることは、製造業で世界を席巻してきた日本にとって大きな損失です。そのような技術者に是非とも奨めたいのが「起業」。
 「起業」というと、ハードルが高くて自分には無理、と思われるかもしれませんが、大げさに「会社」を設立する必要はありません。個人事業、フリーランスからのスタートで充分です。多用な働き方が広がりインターネット環境も充実する中、企業、フリーランスにかかわらず、必要な技術を持つ方にどんどん仕事が流れる時代が到来しています。実際、アシステックでもフリーランスの方によく仕事をお願いしています。
一番大切なのは、自分に何ができるか、自分の「売り」をおさえることです。どのような技術を身につけたか、どのような製品にかかわったか、どのような問題に直面しどのように乗り越えたか。今までの経歴を振り返り、自分の強みを棚卸して、是非自分の「売り」の見える化を行ってみてください。「人より優れているところは何もない」、「あまりたいしたことをしていない」など、ためらう方もおられますが、誰一人として同じキャリアをたどっていません。積み重ねたオンリーワンのキャリアと世の中に製品を送り出した実績から、自分ならではの強みは必ず見つかるはずです。私の場合は最初の会社で鍛えられた機構設計技術が大きな強みでした。また、パナソニック株式会社で経験したR&Dから新事業立上げ、新製品開発の商品化ノウハウが、独自のビジネスモデル「アシステックアライアンス」につながりました。
 営業をどうしたらいいのかとよく聞かれますが、アシステックでは営業活動は行っていません。ホームページからの問い合わせを中心に仕事を進めており、ホームページがいわば営業マン。世の企業は自社が抱える問題や課題の対策を求めて、絶えずアンテナを張っています。ピンポイントでもいいので、「こんなことができる」「こんな課題を解決できる」と打ち出すことが突破口になります。
 また、現役で活躍している技術者の皆さんにも「起業」を奨めたいと思っています。いろいろな製品が求められるとともに海外との競争が激しくなっている中、即戦力になる技術者が求められています。「起業」して、試行錯誤を重ねながら15年間ひたすら走り続けてきましたが、起業して本当によかったと思っています。自分の技術を広く社会に生かせる喜びや自分ですべてを決める自由は、会社では決して味わうことのできないものです。技術者の起業をバックアップすべく、自社サイトにて「技術者独立起業支援」として特に技術者向けに起業相談を無償で行っていますので、どうぞご利用ください。(http://www.assistec.jp/service/support/)

 40年間、技術の道を歩み続けて良かったと思います。そして技術者の熱い想いや力を世の中に広げることに少しでも貢献していきたい、そう考えています。私も120まであとまだ60年、これからも走り続けます。  「ガンバレ、技術者!」